「ヴァア」って何? ポリネシア文化に深く根ざしたアウトリガーカヌーの物語

November 22, 2021 場所 体験

「ヴァア(Va’a)」と聞いてピンとくる方は少ないかもしれません。しかしこの独特なカヌーは、タヒチの島々での生活には欠かせないもの。アウトリガーカヌーを原型にしたものですが、ラグーンや浅瀬の横断に最適化して、現在の形に進化してきました。

© Stéphane Mailion Photography

「ヴァア(Va’a)」の発展

ポリネシアでは古くから、陸上と海上の厳しい環境にさらされながらも、人々の生活を繁栄させるために、ヴァアが重要な役割を果たしてきました。当時すでにポリネシア人は、その巧みな航海術で知られていたのです。

そして現在、数千年も前に太平洋の反対側からやってきた偉大な航海者たちの伝統を引き継ぎ、ポリネシアのカヌー、ヴァアに興じる人々の姿を列島の至るところで見かけることができます。それはティアレの花と同様に、ポリネシアの島々の象徴であり、人々が誇る海洋文化のシンボルでもあるのです。

ヴァアが現在のような競技になったのは19世紀のこと。当時、ラグーンで催されていたヴァアレースは、すでにタヒチ島の伝統行事「ヘイバ」でも、目玉イベントとして開催されていたと伝えられています。このラグーンや海上で行われるヴァアレースは、先祖代々から続くポリネシア人と海とのつながりを最も雄弁に物語っていると言えるでしょう。

© Kim Lawson

「ハワイキヌイ ヴァア (Hawaiki Nui Va’a) 」

現在、数あるレースの中で最も重要なのは「ハワイキヌイ ヴァア (Hawaiki Nui Va’a) 」です。競技は毎年10月末から11月初旬にかけて開催されます。1992年に始まったこのパドリングレースは、タヒチの島々の生活における主要な文化・スポーツイベントです。

1992年に始まったこのアウトリガーカヌーレースは、タヒチの島々の生活における主要な文化・スポーツイベントです。世界で最も過酷なパドリングレースとしても知られています。

国際的な認知度が高まり、海外からの参加者も増えています。この期間中、約100チームが3日間かけ、大海原を舞台に3つのステージで超人的なパフォーマンスを披露します。コースはフアヒネ島を出発し、ライアテア島タハア島を経た後、ゴールのボラボラ島まで続きます。

このアウトリガーカヌーには6人のレーサーが乗り込み、そのほとんどがプロアスリート並みです。ポリネシアはもちろんのこと、ハワイやヨーロッパ、太平洋の島々からもカヌーが集まります。

ハワイキヌイ ヴァアには年齢制限がありません。競技に参加することは「アイト」、つまり戦士になることを意味します。そして見事優勝したチームは、英雄として崇められるのです。

ハワイキヌイはレースというよりも、ポリネシアの魂であり、島々に暮らす人々の美徳、勇気、粘り強さ、チャレンジ精神の集積である、と言っても過言ではありません。

進むために、勝つために、一つにならなければならないレース。

ハワイキヌイの開催中は、ポリネシア全体がこの偉大な競技のリズムに合わせて奮い立ちます。そして当日は、フアヒネ島の人口が2倍に膨れ上がるほどの熱気に包まれます。

© Myles McGuinness

ハワイキヌイ ヴァアレースは、ポリネシアの伝統的な探検と航海を復活させるとともに、ポリネシア文化に深く根ざし、今日スポーツとしても、地元の人々や国際的にも親しまれています。 

タヒチの島々にお越しの際は、ヴァアのイニシエーションを含むアクティビティを通して、ぜひヴァアを体験してみてください。