知られざるタヒチアンダンスの物語

July 29, 2021 場所 体験

© Dimitri Heiva 2017

タヒチアンダンス(Tahitian Dance)は、現地語でオリタヒチ(‘Ori Tahiti)と呼ばれます。これは文字通り「タヒチの踊り」を意味する言葉で、ポリネシアの伝統に根ざした芸術性の高い舞踏を指しています。

オリタヒチは元来、タヒチ人社会の生活を身体の躍動で表現したものであり、その奥義は口伝のみで引き継がれてきました。最も重要かつ馴染み深い文化表現の一つとして、ダンスはタヒチの島々のあらゆるシーンを飾ってきたのです。

オリタヒチには、フォーマルな式典でゲストを歓迎する舞いや、古代の神々に捧げる祈祷や儀式の踊りがある一方、相手に挑戦したり、伴侶の候補を誘惑したりと個人的なものも存在します。そしてタヒチの神話や伝説も、古代から伝わるダンスによって彩られてきたのです。

その長い歴史の中で、オリタヒチは1800年代、転換期を迎えます。タヒチに入植したイギリス人や宣教師たちが、タヒチの伝統的なダンスを挑発的で卑しいものと弾圧したため、衰退の徒を辿ることになったのです。オリタヒチは元来、伝統的な衣装を身にまとい、官能的な動きを伴いました。そのため1820年にイギリス人入植者がそのほとんどを禁止。ただ幸いなことにタヒチの人々は、この逆境にあっても、芸術性の高い踊りの復活を信じ、秘密裏に儀式を継承していきました。そして19世紀後半にタヒチの島々がフランスに併合されたことを機に、徐々にではありますが、伝統的なダンスは息を吹き返すことに成功したのです。ただオリタヒチが現在の形で広がったのは、20世紀半ばになってからのことです。

今日もオリタヒチは、身体の動きによって物語を表現します。しかしそのストーリーは昔に比べて抽象的で、観客が動作の美しさそのものを楽しめるように創作されています。ダンスにはポリネシア語で「女性」を意味する「ヴァヒネ(vahine)」を主題にしたものが多く、現地の女性たちの美しさ、そして官能的なイメージを余すところなく表現しています。

タヒチアンダンスの基本的なステップは、以下の公式YouTubeチャンネルでご覧いただけます:

 

ヘイバ・イ・タヒチ は、毎年7月にタヒチ島で開催されるポリネシア最大のお祭りです

© Dimitri Heiva 2017

タヒチアンダンスは様々なシーンで披露されていますが、中でも毎年開催されるダンスを中心としたタヒチ最大のお祭り「ヘイバ・イ・タヒチ(Heiva i Tahiti)」が有名です。

「ヘイバ・イ・タヒチ」は、夏(7月)の期間、約1か月間にわたり音楽、ダンス、歌といったポリネシア文化を祝う様々なイベントが繰り広げられます。メインイベントはタヒチアンダンスのコンテスト。タヒチ中から最も才能に恵まれた踊り手たちが集結します。なお、今年の7月1日から11日の期間は「ヘイバ・イ・タヒチ」140周年を記念した「タヒチ ティア マイ(Tahiti ti’a mai)」が盛大に開催されました。

タヒチの島々への観光熱の高まりやタヒチアンダンサーによる海外公演の好評を受けて、今やオリタヒチは世界中で愛されています。日本でもタヒチアンダンススタジオや「タヒチ・ヘイヴァ・イン・ジャパン(Tahiti Heiva in Japan)、「タヒチフェスタ(Tahiti Festa)」などのお祭りを通じて、気軽に体験することが可能です。そして、タヒチの島々へお越しの際は、ぜひ生のタヒチアンダンスに触れてみて下さい。皆様のお越しを心よりお待ちしています。